故郷
脳内は夜中に最も動く。
ぐるぐるとした堂々巡りを明日の予定で無理やり押さえつける。
実家の母と定期的にビデオ通話をする。
本当のわたしのことはあまり話せない。
小さな頃から妹弟の面倒を見てきたから、いい子でいなくちゃと未だに思ってしまう。
母のことは大好きで、実家も地元も温かくて楽しかったけれど、首に手をかけられているようなゆるやかな息苦しさがいつもあった。
もうすぐ誕生日なので、プレゼントの希望を聞かれた。
少し勇気を出して本当に欲しいものを言った、けど、妹の学費の話になったので最終的に手紙をリクエストした。
学費の話は単なる雑談のつもりかもしれないし、手紙も貰ったら嬉しい。けど。
妹のように甘えることがわたしに出来たら。
成人しても、ばかみたいにそう思えてしまう。
冷たい東京の片隅にひとり住み、興味を持たれず沢山の人が通り過ぎてゆく。
そんな今の生活の方が心地よく感じてしまう。
誰のことも傷つけたくないし、みんなの幸せを願っているのは本当で。
ミスiDにおいては、いい子でいなくちゃとは思っていない。
出来る限りいろんな面を出していきたい、全部さらけ出したい、それがわたしだから。
今思うに、実家のわたしはわたしではなくて、「長女」だった。
それが悪いこととは言わないけど。
本当のわたしは自信があるし、自己表現が好き。
思い立ったらすぐ行動したいし、他人のことなんて気にしたくない。
よく笑うし中指だって立てたい。
たまには汚い言葉だって吐きたいし、わがままを言って愛する人を困らせたい。
他にもいろいろあって言い切れないけど、とにかく本当のわたしのことを、かなり気に入っている。
守りたいものが多すぎると人はうまく動けなくなるのかもしれない。
だからひとりで東京に来たんだ。
危うく見失いそうになっていた。
わたしはずっと幸せだけど、これからもっと幸せになれると思っています。
このミスiDできっかけを掴みたい。