ひとり
ひとりでいる方が楽だけど、ひとりぼっちにはなりたくないと思ってた。
学生時代は、誰かと一緒にいることで初めて教室に存在することを担保されているような気がした。
私はごくごく普通の女学生で、ひとりでしたいようなことも特になかったので、休み時間は決まって皆と一緒に過ごすようにしていた。
もう思い出せないような恋の話や、顔も分からない近隣学校の先輩の話、同じ世界にいるかも分からなかった芸能人の話なんかにはあまり興味がなかった。
でも、友達が笑ってると幸せな気持ちになれたし、私と違った形の夢とか好きとかいろんなものを知るきっかけになったから良かったとは思う。
今は東京のアパートにひとり。
私のことを知ってる人はほとんどいない。
つまり地元よりも格段に自由で、気楽で、息がしやすい。
それが幸せかというとそうではないかもしれないけれど。
東京にいることは担保されていない。
ひとりの私は、すぐに放り出されてしまうかもしれない小さな存在だということが身に染みて分かる。
今日も慎ましく生活をする。
これからなんでもできる気がする。
「一人」と「独り」は結局同じで、「ひとりでいる」と「ひとりぼっち」も大して変わらない。
誇るものでもないし、卑下する必要もない。
ただそこにひとつの生命が存在するだけ。
ひとつの生命が、場合によりいくつかの生命と繋がり合い、ひとつの生活をしていくだけ。
ひとりで考え事をし続けていたら至った、ひとつの結論。
人間は皆ひとりだと思う。
だからこそ、できるだけ同じ大きさの粒でありたいな。