海
潜っても潜っても終わりが見えなくて怖くなる
しんと冷えきっているのに、
なぜだか底は少しだけ温かいような気がする
沈んだ砂を掴みたくなって手を伸ばす
今年の夏も海に行かなかった
本気になればこんな街を呑み込むことだってできるのに、
なんでも奪い去れるのに、
母性の象徴としてそこに在るだけの海が好き
来年の夏も海に行かないだろう
透明な水をいくつもいくつも重ねて、
やがて深い碧になる
世界のすべてを拒むことなく
なにも語らずそこに在るだけの海が好き